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日本語でも横書きで済むものは横書き。でも、日本語の俳句は縦書き



前回句会の成果と次回句会のお知らせ

2010年11月14日日曜日

第四回句会成果記録と次回お知らせ


『十月としては72年ぶりの寒さ』も遠のいた小春日和の土曜日(十一月六日)、第四回めの句会が開かれました。句会参加者(敬称略)は大畑 等、下田濟二郎、土屋秀夫、宮坂公啓、山中康廣の五名でしたが、当日、出張と重なった中山銀士(なかやま ぎんお)さんと細井尚子さんの投句も加わって投句合計三十六句となり、選句と講評ともに充実した句会になりました。投句者が選句者でもあるということからすれば、選外の句の比率は変わらないのですが、投句の数が多くなると選外の句に、<なぜ、この句が選外に?>という句も現われます。今回からは<高得点句=秀句とはかぎらない・・>との観点から、新たに、得点のなかった作者の評点に【孤高】を設けました。


 以下、兼題の「蓋」をふくむ題詠および有季あるいは無季雑詠三十六句と、選句結果をお知らせします。はじめに、高得点句六句をあげます。投句者が七名に対し、選句者は七名。選句者の持ち点は一人八点( 評価基準は「天(☆)一句=三点、地(◎)一句=二点、人(〇)三句=各一点)、総得点合計=八点×七名=五十六点。選句集計内訳は下の表を参照ください。


 



  蟷螂の腹しゃかむにのやわらかさ    等   ―七点―

  かさ蓋を剥がせば肉ぞ青蜜柑     等  ―五点―

  蓋並べ夜長を量る屋台かな   ちゃぶ台  ―五点―

  バーボンと夜中のジャズに猫が来る   康廣   ―五点―

  のようなものふとあらわれてふっときへ   肝啓   ―五点―

  六十ですべて断る菊一輪   耕人  ―五点――



                   ◆得点合計が高かった作者は次のとおり。
                    ほかの作者の得点と選句集計内訳は下の
                    【集計表】をクリックすると拡大します。
                  

 






  等・・・・・・・・・・・・十八点

  耕人 ・・・・・・・・・・・・十一点

  ちゃぶ台 ・・・・・・・・・・・十点

【集計表】(一度クリックして画像が現われたら、もう一度クリックすると拡大します。)
〈どの句を誰が詠んだか?〉もさることながら、〈どの句に誰と誰が共感したか?〉を確かめてみてはいかがでしょう!〈共感の"こだま"がひびき合う〉のも句会の楽しさのひとつのようです。



    次に当日の投句三十六句を配布された清記表に書かれた順で上の六句を含めて列記します。@涵徳亭


 

一 あくびして背伸びして見る彼岸かな   肝啓

ニ あたたかき朝陽にそっと手をあわせ   夏風

三 行く年の急くを止めんと湯に埋まる  ちゃぶ台

四 蟷螂の腹しゃかむにのやわらかさ   等

五 あつあつと蓋にて喰らう味噌煮込み   夏風

六 鯖雲やさみしい名前古本屋   粒人

七 雨の打つレールに灯るネオンかな   肝啓

八 かさ蓋を剥がせば肉ぞ青蜜柑     等
 

 九 お万燈すすきみみづく鬼子母神   夏風

 十 コオロギと笹の擂り音ハイヒール   康廣

十一 結界に柘榴の味の懐かしく   等

十二 冬坂を登ればひゅるり風マント   耕人

十三 天高しオレは荷物とともにいる   粒人

十四 涙の目悼む心の蓋を開け    康廣

十五 自然薯を擂りボーボワールよりマリリン  等

十六 ダルマの目片方入れて冬座敷   耕人
 

十七 始発には昨日と今日が隣り合い   ちゃぶ台

十八 野沢菜の押し蓋せめる信濃石   耕人

十九 蓋並べ夜長を量る屋台かな    ちゃぶ台

二十 蓋とりて湯気にえかほの冬の鍋   夏風

二一 鍋の蓋コトコト鳴らす白熱灯   肝啓

二二 襟たてて足早にゆくお酉さま   夏風

二三 花くらべコスモス畑に時わすれ   肝啓

二四 二刻弱飛べば北京は冬霞   ちゃぶ台
 

二五 バーボンと夜中のジャズに猫が来る   康廣

ニ六 月見れば女の耳の伸び始む   粒人

ニ七 のようなものふとあらわれてふっときへ  肝啓

二八 蓋閉じて浦島太郎卵酒   ちゃぶ台

二九 歯にしみる冬の口笛よそのそら   耕人

三十 蓋を閉じ待つ顔見れば昔顔   康廣

三一 蓋取ればデジャブの湯気や出前そば   耕人

三ニ 欲望の綴じ蓋開けて禿山へ    康廣
 

三三 山路来て仁義忠孝礼智信   粒人

三四 六十ですべて断る菊一輪   耕人

三五 虫時雨くずれぬように人を焼く   等

三六 蓋とれば鰻は静かに並びおり   粒人

次に、中山銀士さんが多忙な出張先から送ってくださった選句と講評をご紹介させていただきます。すべての投句をたいへん丁寧に読んでおられ、<俳句講評のお手本>ではないでしょうか。
句会ホチュウ類のみなさんの講評を宮坂まで送信いただければ、このブログに掲載いたします。

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熊本名物桜肉と焼酎でイキオイをつけ、なんとか選句を終えました。
1、4、8、11、18、27、28、34、35と書き写したところで迷い始め、優柔不断の悪癖に邪魔をされたのでしたが、この三日間ほどの、山里での神社巡りや神楽博物館見物での印象にかこつけてなんとか選びきりました。

天…34「六十ですべて断わる菊一輪」

地…35「虫時雨くずれぬように人を焼く」

人…11「結界に柘榴」
   4「蟷螂の腹」
   1「あくびして」

最後まで迷ったのが27「のようなもの」でした。落語好きなもんで…。

●「六十で」には、キッパリとした余韻の味わいと同時に、古代中国渡来の陰陽道的人生観に、いまだに捉えられているわれわれの滑稽さを指し示すような、裏効果がありそうです。「六十」で始めて「一」でシメるテクニックにも敬服。


●「虫時雨」、これまた魅力あふれる句です。ガンジス川岸で遺体を野焼きする光景を、昨年、見物して来たばかりでして(笑)。一定したリズムをくずさぬ虫の群れと、メラメラ燃えるムクロとの対比は絶妙なり!。孤独な穏坊(放送禁止用語か?)のつぶやきも幻聴されます。


●「結界」の味覚には思わず口をすぼめました。「結界にて」としたほうが情景がよりハッキリするように思いますが。

●「蟷螂」。子供の頃味わった指の触角、いや触覚がよみがえり、しゃにむに声に出したくなる「しゃかむに」の語感の愉快さ。…やや技巧的過ぎるかなあ、との印象あり。

●「あくびして」には、森進一の名曲を想起し、遠ざかる「汽笛」が聞こえるような聴覚体験でした。「あくびして背伸びし」た途端に自失する体験は、どなたにも心当たりがあるのではないでしょうか。その一瞬に、「彼岸」は確かに見えるのですな。

では、皆様によろしくどうぞ。 2010/11/05 09:14am 中山銀士@熊本

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                ―席題@飯田橋 三州屋は、今回モ(のみすぎて)お休み―
 

追伸:
次回は1月15日(土)午後5時から、場所は今回とおなじ小石川後楽園涵徳亭(かんとくてい)
◎会費:3,000¥/人(会場使用料+軽い飲食費)、飲み会は別途精算。
投句は五句。題詠一句以上、有季または無季雑詠あわせて五句を投句いただけますでしょうか。    兼題はおと。席題は飲み会の成り行きで、飲み会は午後8時半ごろから場所は未定(成り行き次第)
投句締切りは1月13日(木)昼ごろまでに宮坂宛てにメールで送信いただけますでしょうか。